IMA de × TAMA多摩の暮らし Tama no Kurashi

2018.07.13

多摩の暮らし 

TEXT BY 崎谷未央

「馬Café マリヤの風」

代表 山崎立暎さん

この写真を見て、どんな場所のどんな暮らしを想像しますか。北海道での牧場経営? 九州の草原で気ままなナチュラルライフ? 実は、ここは東京都の西部にある日野市です!

新宿駅から京王線で約30分の、れっきとした東京都です!  写真の山崎立暎(やまざきりえ)さんは、乗馬体験やホースセラピー行う「馬Café マリヤの風」を運営しながら、自分の娘のような馬=マリヤと心を通わせ、自然を満喫する「日野市=多摩暮らし」を楽しんでいます。

 

乗馬で心を解き放つ  

非日常の世界へようこそ

▲赤丸の部分にマリヤがいます

山崎さんが運営する「馬Café マリヤの風」は、京王線高幡不動駅から徒歩10分、浅川沿いにあります。驚くのは、マリヤがごく普通の住宅街にいるということ。マリヤは、多摩の牧場や山の中に住んでいるのではなく、どこにでもある住宅街、山崎さんのご自宅ガレージに住んでいるのです!

▲高幡不動駅前から高幡不動尊お参りコースもあります

最初は山崎さんの近所で戸惑った方もいらっしゃったといいますが、牧場特有の臭いを抑える努力を重ね、そのかいあってマリヤを受け入れてくれたそうです。

今では、お客さまを乗せたマリヤが住宅街をパカパカと歩く姿が地域に溶け込み、京王線の高幡不動駅前に現れたり、高幡不動尊前で記念撮影が行われたり、季節で姿を変える自然の中での乗馬、結婚記念やコスプレのロケーションフォト撮影など、さまざまなカタチで人気を集めています。

▲桜の季節には浅川沿いの桜並木を歩きます

 

ホースセラピーで子どもを元気にする

プロジェクトを提案

山崎さんがマリヤと出会ったのは7年前――山崎さんはセラピストになるため、渋谷のカウンセラー養成学院に通っていたときに、馬と交流することで癒しを得る「ホースセラピー」というものを知ります。

さらに“ホースセラピー”で創業したいと2011年9月に三鷹市で行われた、起業塾「みたか身の丈起業塾プロジェクト」に参加。「セラピーホースを数人でシェアし、子どもたちを元気にするプロジェクト」を提案し、見事準入賞して150万円の起業支援金を獲得。そのお金を元手に、相棒となる馬を探し回った時、体がひと周り小さく、牧場主いわく「セラピーには適している」馬と出会いました。それがマリヤだったのです。

「なにしろ子馬で、人懐こくてかわいかった。事業準備金を受け取ってわずか2日目での出会いでした」

▲買った当初のマリヤ(子馬の顔でしょう!)

もちろん、日野市で飼うつもりではなかったのでマリヤはしばらく他人の牧場にあずけることに。牧場に置いて1年くらいたったころからどんどん痩せていきました。アクシデントが重なり、預託先を数カ所転々とするうちに、最後は熱中症で倒れてしまいます。

そこで急きょ、自宅に連れてくることになりました。馬房の準備もなくマリヤが先にきたので、急いで自宅ガレージを改装して馬房を作り、懸命に世話をする中、マリヤも少しずつ回復していきました。こうしてマリヤと心を通わせていくうち、しばらくすると、自らバケツにおしっこをしてくれるようになり、牧場にありがちな“匂い”の問題もなくなりました。こうして都会の住宅街で「馬と暮らす」という奇跡的な生活がはじまったのです。

近所の人たちもニンジンを差し入れたり、近所の農家がマリヤのボロ(うんち)を肥料として受け取ってくれたり、店の看板を作ってくれたりしました。友人から譲り受けたトラックを改造してマリヤの馬運車までも作ってくれ、さまざま応援をしてくれました。

▲仲間がトラックの荷台を改装してマリヤの馬運車を設計してくれたそうです

 

お客さまの思いを聞きながら、

多彩な「乗馬時間」を演出

日本では、一般的に乗馬というと、馬の乗り方やスキルに重点を置いている施設が多い中、「馬Café マリヤの風」のサービスは違います。「馬に乗って駅や街中を歩いてみたい!」「和装の花嫁で馬にのってみたい!」と非日常的な夢の実現と「多摩に残る自然の中で自由に馬に乗る!」そんな乗馬で“心を開放”してもらうことに重点を置いています。

▲きもの姿で高幡不動参道を散歩し、記念撮影

「乗馬のスキルアップやホースセラピーも同じですが、メニューやメソッドは人が後から考えたもの。私は馬自体がセラピー的効果を持っていると思っていますので、なるべく自由に馬に乗ったり触れ合っている時間を大切に提供したい」と山崎さんは語ります。

お客さまから電話がかかってくると、どんな時間を過ごしたいかを質問。技術や経験などを考えながら、サービス時間の1時間の演出を考えます。近くの浅川の河原は緑も豊富で、人気のコース。河原に出ると周りは緑に囲まれ、風が流れ、多摩に残った大自然を身体いっぱい感じられます。

▲人気の近くの浅川でのホースライディング

また、もうひとつ「馬Café マリヤの風」独自のサービスがあります。少しスピリチュアルな話になりますが、山崎さんは娘のような愛馬=マリヤと心を通わせていくうちに、「馬のマリヤや動物たちとはなしができるようになった」というのです。

きっかけはある日、アメリカから「動物と話せる」というお客さまがいらっしゃったこと。そのお客さまが、マリヤは、「ワタシは(山崎さんに)助けてもらったことを知っている。だからお仕事はなんでもする。人間は自分を一番理性的で賢いと思っている。ワタシのことはただの馬と思っている。だから馬としてしか接していなかったけれど、ワタシにはもっとできることがある」と言っているというのです。

▲マリヤと話せるアメリカ女性

山崎さんはその言葉を聞いて「まさかマリヤがそんなに思ってくれていたの!」と感動し涙を流したといいます。それからよりマリヤとの信頼関係が変わっていきます。そこで山崎さんはアメリカの女性に勉強会を開いてもらいました。自らも勉強をし、動物と話す能力を身に着けていきました。言葉はビジュアルのように見えたり声できこえたりするそうです。マリヤがお客さまの気持ち寄り添って発するメッセージが人の心を捉えているのです。

 

疲れた人の心にそっと寄り添う言葉が

人の心をつかむ

山崎さんは「当然のことながら、動物同士はコミュニケーションをとっています。昔、人間も同じようにコミュニケーションがとれていたが文明や文化とともに忘れてしまったその能力を引き出せばいい」と語ります。

あるお客さまが「わたし、仕事をしたくない、どうしたら仕事がしたくなる?」と言いました。
そのお客さまにマリヤはこう言うのです。

「ワタシもお仕事は嫌い。でも、ワタシに乗ってくれた人たちが元気になってニコニコ笑顔になる。それを見ることがうれしい。だからお仕事するよ」

「友達がいじめにあっている、なんて言ってあげればいい?」という高校生には「言葉はいらない。その子のことを心配して寄り添ってあげるあなたがいれば大丈夫」といったそうです。

▲マリヤの言葉を集めたホームページ「マリヤの相談室」も運営

山崎さんは「当初は、動物と話せるというと信じられない人から攻撃をうけるのが怖くて、そのことを発信はしなかった」と言います。しかし、ある日マリヤからメッセージが来ました。「そんなことはどっちでもいいこと。ワタシが話していようが、ママ(山崎さん)が話していようが、大切なことはその言葉を受け取って元気になったり、癒されたりする人がいること」と。

山崎さんは確かにその通りだと思ったそうです。

「人間は自分が攻撃されることを恐れています。だから簡単な本質がみえなくなっちゃうんですね」

それからはこのことを言ったうえで、マリヤの話をお客さまに伝えているそうです。「帰り際に、お客さまの心が軽くなって笑顔で帰って行かれる姿を見るときが本当に嬉しいんです」と笑う。

実は、山崎さんもまた、ホースセラピーを開業する前は、離婚、再婚、互いの連れ子との交流、再婚相手との死別と大変な人生を歩まれた。その中で、カウンセリングを学び、ホースセラピーと出会い、「もしかしたら、誰でももっと気軽に馬に乗ることができたら、さまざまな問題解決ができるかもしれない」と思い創業したのです。

▲「悩みは悩むなといっても悩みます(笑)」と山崎さん

山崎さん自身もカウンセリングやセラピー、馬と時間に、癒され、励まされたひとりでした。

「結局は、悩みは自分で気づいて乗り越えるしかなかったんですね。だからこそ自然の中に身を置いて自分を解放する時間をほんの少しでもとってあげて欲しい」と山崎さんはいいます。

 

都会の中で馬と一緒に生活し、馬との時間と空間を提供することで、お客さまが元気になれたらうれしい!
――疲れたらあなたも、山崎さんとマリヤのこんな「多摩の暮らし」を体験してみたらいかがですか?

▲予約制でレストランも運営

▲遠方が来るお客さまのために2部屋の民泊施設も運営

 

 

 

 

 

 

住所/東京都日野市石田305-17

アクセス/京王線 高幡不動駅から徒歩約15分または多摩モノレール 万願寺駅から徒歩約10分

TEL/080-4445-4560

乗馬料金/1時間1万円~

詳しくはhttps://www.mariyanokaze.com/